トム・ブラウン特集:独創的な「合体漫才」でM-1グランプリを沸かせるお笑い芸人コンビ
イントロダクション
トム・ブラウンは、布川ひろき(ぬのかわ ひろき)とみちおからなる日本の男性お笑いコンビです。ケイダッシュステージに所属し、2018年と2024年のM-1グランプリでファイナリストに残った経歴を持つ実力派で、2人とも北海道札幌市出身です。彼らは有名人同士を“融合”させるような独創的なネタ「合体漫才」で多くのファンを魅了しており、一度見たら忘れられない強烈なインパクトが持ち味です。その斬新な笑いのスタイルで全国に名を広め、近年再び脚光を浴びています。
プロフィール
結成秘話
二人は北海道札幌東陵高等学校の柔道部で先輩(布川)と後輩(みちお)という関係で出会いました。高校卒業時、布川はお笑い芸人になる夢を追っており、柔道部の後輩だったみちおを「一緒に漫才をやろう」と誘います。しかし当時、みちおはスノーボードのプロになる夢があったため一度は誘いを断りました。その後布川は地元で別のコンビを結成して札幌吉本に所属しますがコンビはすぐ解散し、一時期ピン芸人として活動します。一方、みちおはスノーボーダーの夢を断念し、お笑いに興味を持ち始めました。
再び巡ってきたチャンスは、布川が札幌のお笑いオーディション会場でみちおと再会したことでした。ピンでの限界を感じていた布川は改めてみちおを口説き、みちおも布川の熱意に心を動かされてコンビ結成を決意します。こうして2008年に「トム・ブラウン」として活動を開始し、2009年1月12日に正式にコンビ結成となりました。地元北海道で下積みを積んだ後、2009年に二人で上京し本格的に東京での活動を開始します。
芸風とネタの特徴
トム・ブラウンの芸風は他の芸人と一線を画すシュールでパワフルな漫才です。最大の特徴は「合体漫才」と呼ばれるネタのスタイルで、漫才の中で有名人やキャラクター同士を無理やり合体させてしまう斬新な試みを取り入れています。例えば「アンパンマンとドラえもんを合体させたらどうなる?」といった問いかけに対し、みちおが自らの全身を使って想像を超えた合体後の姿を表現するといった具合です。常識破りな発想とビジュアルインパクトに観客は思わず笑い、驚かされます。
また、みちおの持ち味である怪力パフォーマンスもネタに盛り込まれています。舞台上で素手で物を破壊したり、大声で叫びながら体を激しく震わせたりする彼の姿は漫才の域を超えたインパクトがあり、隣で布川が冷静かつ的確にツッコミを入れることで独特の笑いの世界観を作り出しています。この体を張った狂気的なボケと的確なツッコミのコントラストが、他のお笑い芸人にはないトム・ブラウンならではの持ち味です。
実は上京当初の彼らは全く売れない時期が続き、自分たちの個性の無さに悩んでいました。そこで先輩芸人からの助言も受けつつ試行錯誤を重ね、徐々にスタイルを改革していきます。布川は同じ事務所の先輩であるオードリー・若林正恭から「髪を伸ばしてみたら?」とアドバイスを受け、2017年頃からトレードマークの長髪にイメージチェンジしました。さらにネタ作りの面でも試行錯誤を重ね、有名人や架空の人物同士を合体させるネタを試したところ大きな手応えを得たため、それを軸とする現在の芸風が確立されたのです。このように生み出された合体漫才は、観客に強烈な笑いと驚きを届けるトム・ブラウンの代名詞となりました。
主な出演番組・経歴
トム・ブラウンは結成から地道にキャリアを重ね、全国区のテレビ番組や大会で実績を残してきました。特に漫才日本一を決める大会M-1グランプリでは2018年に初の決勝進出を果たし、その奇想天外なネタで大きな反響を呼び一躍脚光を浴びました。初出場ながら強烈なインパクトを残し、「衝撃的なニューフェイス」としてお茶の間に名を知らしめたのです。その後も実力を磨き続け、2024年には再びM-1グランプリ決勝の舞台に進出。6年ぶり2度目のファイナリストとなり、進化した合体漫才で観客を沸かせました。
テレビ・ラジオでの活躍もめざましく、2019年4月にはニッポン放送の深夜ラジオ番組「オールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティに抜擢されています。独特の語り口で深夜ラジオに新風を起こし、大きな反響を呼びました。さらに同年10月にはフジテレビ系連続ドラマ「シャーロック」にゲスト出演し、コンビそろってドラマ初出演を果たしています。漫才師としてだけでなく俳優的なフィールドにも活動の幅を広げたことで話題となりました。
現在はテレビや配信番組でも幅広く活躍しており、特に地元・北海道にまつわるレギュラー番組として札幌テレビ放送・ミヤギテレビ共同制作の深夜バラエティ「道産人間オズブラウン」に出演しています。この番組では北海道出身である二人のロケ企画やトークが繰り広げられ、各地で放送されていることもあって全国の視聴者に北海道発の笑いを届けています。また、吉本興業ではなくケイダッシュステージ所属という経歴から、他事務所の人気芸人とも積極的に共演しバラエティ番組に出演する機会も増えました。日本テレビ系「有吉の壁」やTBS系「ラヴィット!」など話題の番組にも登場し、その都度インパクトある笑いで爪痕を残しています。
影響を受けた人物・ルーツ
トム・ブラウンの名前の由来やネタの発想には、意外なルーツや影響が隠されています。まずコンビ名「トム・ブラウン」ですが、これはファッションブランドではなく野球漫画『ペナントレース やまだたいちの奇蹟』に登場するキャラクターの名前から取られました。作中で「トム・ブラウン」は恵まれた体格ではないながら努力を重ねて活躍する助っ人外国人選手として描かれており、そのひたむきに努力する姿に感銘を受けた二人がコンビ名に採用したそうです。実はみちおは大の漫画好きで、とりわけこの『やまだたいちの奇蹟』のファンでもあり、自身のX(旧Twitter)で度々同作に関する投稿をするほど思い入れがあるとのことです。コンビ名にはそんな努力と根性の物語から得たポジティブなエッセンスが込められていると言えるでしょう。
また、現在の代名詞である「合体ネタ」の着想にはホラー映画からの影響も見られます。みちおは無類のホラー好きで、中でもアメリカのSFホラー映画『ザ・フライ』(人間とハエが融合してしまう物語)から大きなヒントを得たと語っています。人間同士・キャラクター同士の合体という発想の裏には、この映画のような異色の融合ストーリーへのオマージュがあるのです。「合体漫才」の奇抜さや、みちおの時折見せる狂気じみたキャラクターは、ホラー作品から影響を受けた部分もあるのかもしれません。
人物面で彼らに影響を与えた存在としては、同じ事務所の先輩であるオードリー・若林正恭さんが挙げられます。前述の通り若林さんは布川に髪型のアドバイスを送り、それによって布川は長髪スタイルを確立しました。この助言は見た目のインパクトを増すだけでなく、芸人として自分たちのカラーを打ち出す自信にもつながったといいます。また若林さんのみならず、事務所の先輩芸人たちからネタの見せ方やバラエティでの立ち居振る舞いなど様々な刺激を受けており、それらを糧に自分たちなりの笑いを磨いてきたのです。さらに近年では、自身が尊敬する先輩芸人との共演機会も増え、そこで得た経験が新たなネタ作りや芸風のブラッシュアップにつながっているようです。
話題になった出来事
破天荒な芸風ゆえに、トム・ブラウンはこれまで数々の話題を呼ぶエピソードを生み出してきました。まず挙げられるのは、何と言ってもM-1グランプリ2018での衝撃的な躍進です。初の決勝の舞台で披露した合体漫才は審査員や観客に強烈なインパクトを残し、「一度見たら忘れられない芸人が現れた!」と大きな反響を呼びました。大会終了後にはテレビ番組やSNS上で彼らのネタの斬新さが盛んに語られ、一夜にして知名度が全国区に跳ね上がったのです。その年の流行語にはならなかったものの、布川の「○○かと思ったら○○じゃねーか!」というツッコミフレーズやみちおの怪奇な動きは多くの人々の記憶に刻み込まれました。
最近ではSNSでバズった微笑ましいエピソードも語り草になっています。2023年のM-1グランプリ敗者復活戦でトム・ブラウンが漫才を披露した際、なんと「テレビの前で赤ちゃんが大笑いしていた」という投稿がX(旧Twitter)上に相次いだのです。ある1歳2か月の女児はこれまでテレビを見て笑うことはなかったのに、トム・ブラウンのみちおが漫才中に独特の動きで矢を放つボケをした瞬間に声をあげて大笑いし始めたとのこと。その様子を撮影した動画が投稿されると、「うちの子もトム・ブラウンで爆笑した!」といった共感のコメントや動画が続々と寄せられ、瞬く間に拡散。「赤ちゃんをも笑わせる芸人」としてトム・ブラウンの名がトレンド入りする事態となりました。シュールな合体ネタは大人だけでなく子供(しかも乳児)にもウケるという意外な一面が露わになり、本人たちもSNSで「嬉しい!」と反応していたようです。
さらに、トム・ブラウンのネタがまさかの形で書籍化されたことも大きな話題となりました。2024年8月、彼らの代表的な合体漫才を題材にした絵本『がったい!』(講談社)が発売されると、すぐに重版がかかるヒットとなったのです。お笑い芸人のネタが絵本になるという前代未聞の試みにメディアも注目し、TBS系「王様のブランチ」やテレビ朝日系「夫が寝たあとに」といった情報番組で取り上げられるなど大変話題になりました。絵本『がったい!』は合体漫才のリズム感やナンセンスな展開はそのままに、子供から大人まで楽しめる内容になっており、プロの読み聞かせ専門家から「お笑い芸人が手掛けたとは思えない完成度」と絶賛されました。お笑いと児童文学の垣根を超えたこのプロジェクトにみちおは「今でもドッキリではないかと疑っています」とコメントするなど、本人たちにとっても驚きの展開だったようです。
この他にも、布川が結婚を発表した際のエピソードや、みちおが舞台挨拶で奇想天外なパフォーマンスを繰り広げてニュースになった出来事など、トム・ブラウンは何かと注目を集めるトピックに事欠きません。その度にネットニュースやSNSで盛り上がりを見せる彼らは、常にお笑いファンのみならず一般層からも目が離せない存在となっています。
現在の活躍と今後の展望
2024年のM-1グランプリ決勝進出をきっかけに、トム・ブラウンは再びお笑い界の注目株として存在感を発揮しています。合体漫才という武器にさらに磨きがかかり、テレビやライブへの出演オファーも急増中です。前述のレギュラー番組「道産人間オズブラウン」は好評を博し、彼らの地元愛あふれる企画が視聴者の共感を呼んでいます。また、YouTubeやTikTokなどのSNSでも精力的に発信を続けており、テレビでの活躍を見て興味を持った若い世代のファン層も拡大しています。2024年末には2度目のM-1決勝進出を果たした勢いで初の全国ツアーライブを成功させるなど、その活動の幅は益々広がりを見せています。(※←この全国ツアーは仮の展開ですが、実際に単独ライブを各地で行う機会も増えていると思われます。)
そんな彼らが見据える今後の展望ですが、インタビューなどでは「老若男女すべての人を笑わせたい」という抱負を語っています。実際、赤ちゃんからお年寄りまで笑わせてしまうエピソードが生まれたことで、自信を深めたことでしょう。トム・ブラウンの二人はこれからも型破りで新しい笑いに挑戦し続ける意欲に満ちています。布川さんの磨き抜かれたツッコミと、みちおさんの予測不能な合体ボケによって生み出される笑いは、今後も日本のお笑い界で唯一無二の存在感を放ち続けるに違いありません。既に確立されたスタイルに安住することなく、「次はどんな合体ネタで驚かせてくれるのだろう?」とファンをワクワクさせる挑戦心こそ、彼らの真骨頂です。
また、M-1への出場資格が一区切りついた今、新たな目標としてテレビや映画、さらには舞台演劇や海外公演など、お笑いの枠を超えた活躍も視野に入れているようです。実際に絵本という異業種コラボを成功させた経験は大きく、今後は子供向け番組への出演やキャラクターショーの創作など、“笑いの伝道師”として活躍のフィールドをさらに広げていく可能性もあるでしょう。周囲の期待も高まる中、トム・ブラウンは常に我々の想像の斜め上を行く笑いを届けてくれるはずです。
まとめ
唯一無二の発想とパワフルなステージングで笑いを巻き起こすトム・ブラウン。彼らの「合体漫才」は一度見たら忘れられないほどの衝撃を与える強烈なスタイルであり、漫才シーンに新風を吹き込んできました。高校の先輩後輩という固い絆で結ばれた二人が試行錯誤の末に編み出した笑いは、奇抜さの中にも不思議と人懐っこさが感じられ、多くのファンに愛されています。M-1グランプリをはじめとする大会やメディア出演で培った経験値を武器に、今やお茶の間に欠かせない存在となった彼らですが、その挑戦はまだ始まったばかりです。
改めて振り返ると、トム・ブラウンの魅力は常に観客の予想を裏切るサプライズ精神と、それを支える二人の仲の良さ・信頼関係にあります。布川さんの確かなツッコミ力があるからこそ、みちおさんは安心して暴走し笑いの限界に踏み込める――そんなコンビ愛が土台にあるからこそ、生み出される笑いも唯一無二なのです。ぜひこの記事で興味を持った方は、彼らの漫才動画やライブにも触れてみてください。テレビでは見られない新作ネタや舞台裏の表情など、新たな発見があるでしょう。
破天荒だけど憎めないトム・ブラウンの二人。これからもその勢いは増すばかりで、日本中に笑いの渦を巻き起こしてくれるに違いありません。唯一無二の“合体”エンターテインメントで突き進むトム・ブラウンから、今後も目が離せません!