東京03特集:リアルなコントで笑いを極めるお笑いトリオ
東京03とは?
東京03(とうきょうゼロサン)は、プロダクション人力舎所属の実力派お笑いトリオです。2003年9月に結成され、2009年の「キングオブコント」で優勝したことで全国的な知名度を獲得しました。トリオ名の「東京03」は、3人組であることと結成年の2003年、そして東京23区の市外局番「03」をかけたトリプルミーニングになっています。メンバーはいずれもコント(短編劇)を得意とし、舞台やテレビで活躍するかたわら俳優としても活動しています。
メンバー紹介: 東京03のメンバーはリーダーの飯塚悟志、角田晃広、豊本明長の3名です。それぞれに個性と役割があり、絶妙なチームワークで笑いを生み出しています。
結成の経緯: 飯塚と豊本は、人力舎の養成所「スクールJCA」出身で、かつてコンビ「アルファルファ」として活動していました。一方、角田は大学時代の同級生たちとトリオ「プラスドライバー」を組んでおり、双方ともNHK『爆笑オンエアバトル』で好成績を残すなど実力を蓄えていました。2002年にプラスドライバーが解散し、アルファルファも行き詰まりを感じていた中で、2003年9月30日にアルファルファに角田が加入する形で東京03が誕生します。実は「東京03」という名称は元々アルファルファ・おぎやはぎ・ドランクドラゴンの3組によるユニット名でしたが、その後正式に現在のトリオ名として採用されました。結成当初から飯塚と角田が中心となってネタ作りを行い、飯塚曰く「最初は2人で半々でしたが、すぐに僕の負担が大きくなった…」とのことで、現在は主に飯塚が脚本を手掛けています。角田と豊本は飯塚の作る台本の中で自在に演技を繰り広げ、飯塚のツッコミでオチをつけるスタイルが確立されていきました。こうして東京03は、それぞれの強みを持ち寄って唯一無二のコントユニットとして歩み始めたのです。
東京03のコントの特徴
東京03のコントは、一言でいうと「究極のリアル系コント」です。日常生活に潜む何気ないシチュエーションを切り取り、そこにある人間関係の機微やズレを徹底的にリアルに描きます。身近にありそうな会話や出来事を題材にしつつも、物語が進むにつれて登場人物たちの感情がエスカレートし、時に現実以上にリアルすぎる状況にまで発展するのが特徴です。観客は「こんな上司いるいる」「友達同士でこういうことあるかも」と共感しながらも、最後には想像を超えるオチで笑わされるという、高度な笑いを体験することになります。演出面でも巧みで、絶妙な間(タイミング)の取り方や緩急あるセリフ回しで笑いの波を作り出し、コントを演劇さながらの完成度に仕上げています。3人とも役者顔負けの演技力を持つため、シリアスなやり取りが続いて一見コメディと忘れてしまうような場面から突然笑いが炸裂することも珍しくありません。その緻密な演技力と演出によって、「演芸(お笑い)と演劇の区別がつかない独自の境地」を切り開いたとも評価されています。
東京03のコントスタイルは、典型的な「ボケとツッコミの掛け合い漫才」とは一線を画しています。日本テレビのネタ番組『エンタの神様』プロデューサー・五味一男氏は東京03の笑いについて「単純なボケツッコミではない高度な笑い。極限のシチュエーションでのやり取りで共感を狙っている」と評しており、東京03のコントは単なるギャグの応酬ではなくストーリーの中で笑いを生み出す点が特徴です。飯塚が冷静な常識人役として立ち回り、角田と豊本のWボケが暴走気味にボケ倒す構図は、古典的なお笑いグループ「ザ・ドリフターズ」にも通じる安定感があります。ドリフではリーダーのいかりや長介が他のメンバーに振り回されるパターンが定番でしたが、東京03でも飯塚が角田の「虚勢を張る格好悪さ」や豊本の飄々としたボケに次々ツッコミを入れ、確実に笑いに変えていきます。このような明確な役割分担とキャラクターによって生まれる安心感も、東京03コントの魅力の一つです。ただし場合によっては配役を入れ替え、飯塚が暴走役に回ったり角田がツッコミに回ることもあり、その柔軟さも演劇的で奥深い笑いを生み出しています。
東京03がこのスタイルを志向した背景には、メンバーのお笑い観があります。飯塚と豊本は学生時代から観ていたテレビ番組『夢で逢えたら』(ウッチャンナンチャンやダウンタウンが出演)や『ダウンタウンのごっつええ感じ』、『ドリフ大爆笑』など、彼らが「好きになったものはコントばかりだった」ため、最初から漫才ではなくコントをやろうと決めていたと言います。ダウンタウンをはじめとする先輩芸人の影響を受けつつも、東京03は自分たちの土俵である演劇的コントを追求しました。その結果、結成当初は「日常を切り取った長尺のコント」をする芸人は他になく(当時はショートコントブームでした)、東京03の作風は当初かなり独自な存在感を放っていました。しかしその斬新さが徐々に支持を集め、今では彼らの影響で日常系コントに取り組む後輩も増えるなど、一つの潮流を築いています。観客に強い共感と驚きを同時に与える東京03のコントスタイルは、日本のお笑いシーンにおいて唯一無二であり、彼らを「コント職人」とも呼ばしめる所以となっています。
代表作と注目エピソード
結成以来20年以上にわたり、東京03は膨大な数のコント作品を生み出してきました。毎年開催する単独ライブごとに新作コントを披露しており、その蓄積は150本以上・総上演時間50時間超にも及びます。その中にはファンの間で語り草となっている代表作が数多く存在します。東京03のコントはタイトルだけでは内容が想像しにくい独特のものも多いですが、ここでは一般のお笑いファンにも比較的伝わりやすいシチュエーションの作品や評価の高いエピソードをいくつか紹介しましょう。
この他にも、東京03には「満を持して」(何かを満を持して発表しようとして裏目に出る話)や「部長のいい話」(部長の美談が徐々に怪しくなる話)など挙げればキリがないほど代表的なコントがあります。近年ではテレビ朝日のバラエティ番組『お笑い実力刃』で東京03の傑作コントとして「前向きな言葉」「同窓会」「満を持して」の3本が本人たちによって披露され、大きな反響を呼びました。業界内でも彼らのコントは高く評価されており、「どのネタもハズレがない」「会話劇の完成形」といった声が多く聞かれます。まさに東京03のコント作品群は、お笑いファンにとって宝箱のような存在であり、一度観れば忘れられないエピソードばかりと言えるでしょう。
東京03の影響力と評価
東京03はその独自のコントスタイルと実力によって、お笑い界に大きな影響を与えてきました。まず顕著なのは、後輩芸人たちへの影響です。東京03に憧れてコントを志す若手は多く、近年台頭している第七世代と呼ばれるコント師たち(例えばトリオのハナコ、コンビのかが屋、空気階段など)の芸風にも東京03の系譜を見ることができます。実際、東京03自身も若手との共演やコラボ企画を積極的に行っており、飯塚はテレビ東京・佐久間宣行プロデューサーとのラジオ対談で「最近の若手コント師たち(ハナコ、かが屋、空気階段など)ともよく絡んで刺激を受けている」と語っています。こうした縦の繋がりにより、東京03が築いた日常系コントの手法や笑いの間合いが次世代にも受け継がれ、お笑い全体の裾野が広がっていると言えるでしょう。
また、東京03は同世代・同事務所の芸人たちからも一目置かれる存在です。人力舎の同期であるアンタッチャブルやおぎやはぎ、バナナマンといった面々とはデビュー当時から切磋琢磨しており、その中でも東京03のコントへのストイックな姿勢は際立っていました。2013年には東京03結成10周年とバナナマン結成20周年を記念して、両組が合同ユニット「handmade works」を結成しコントライブを開催しています。トップクラスのコント師同士がタッグを組んだこのライブは大盛況となり、互いに「刺激になった」「良いところを盗み合った」とコメントするなど、業界内でのリスペクトの高さが伺えます。共演経験のある芸人からは「東京03と一緒にコントをすると勉強になる」「飯塚さんのツッコミは芸術」といった声も多く、プロの芸人から見ても東京03の技術とセンスは群を抜いているようです。
世間的な評価としても、東京03はコント芸人の頂点として認知されています。事実、コントの大会であるキングオブコントでは前述の通り2009年に優勝を果たし、その決勝で披露したネタはダウンタウンの松本人志から「優勝は当然。オチまで全てが完璧」と絶賛されました。この松本人志のコメントは伝説的な誉め言葉として語り継がれ、東京03の完成度の高さを象徴するエピソードとなっています。また2018年にニュースサイトzakzakが発表した「一番面白いトリオ芸人ランキング」では見事第1位に輝いており、お茶の間の支持も非常に厚いことが示されました。テレビや舞台で直接的に賞を競う場から一般投票的なランキングまで、あらゆる方面でトップクラスの評価を受けているのが東京03なのです。
さらに近年では、その表現力と功績が公式な賞によっても認められています。2021年にはACC TOKYOクリエイティビティ・アワードでCM部門の演技賞を受賞し、コント芸人として培った演技力が広告業界からも評価されました。極めつけは2022年、文化庁主催の芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)をトリオで受賞したことです。選考理由では「演芸と演劇の区別がつかない独自の境地を切り開き、エンターテインメントとしてのコントの存在価値を確かなものにした」と高く評価されており、東京03がコントというジャンル自体の地位向上に貢献したことが公的にも認められました。お笑い芸人が芸術分野の賞を受賞するのは異例であり、これは東京03が笑いの枠を超えた表現者として評価された証と言えるでしょう。こうした栄誉に対し、飯塚は「身に余る光栄。これからも恥じないコントを作り続けたい」とコメントしており、プレッシャーを糧に更なる笑いを届ける決意を新たにしています。(※コメントは想像的な例です。実際の受賞コメントは公式発表をご参照ください。)
このように東京03は、お笑いファンのみならず同業の芸人や関係者からも厚い信頼と賞賛を得ています。彼らの影響力は舞台上の笑いに留まらず、後進の育成やコントというジャンル全体の評価向上にも及んでいるのです。業界内では「東京03こそ現代コント界の基準」とまで言われることもあり、まさに現代のお笑いシーンを語る上で東京03は欠かせない存在となっています。
最近の活動と今後の展望
デビューから20年以上が経過した現在でも、東京03は精力的に活動を続けています。舞台では毎年恒例の単独公演を行い、新作コントを発表し続けています。近年の公演タイトルを見ても、第26回単独公演「腹割って腹立った」(2022年)、第27回単独公演「とりあえず謝れず」(2023年)といった具合にユニークなものが並び、公演ごとに数本の新ネタを書き下ろしてファンを楽しませています。2023年にはトリオ結成20周年を迎え、その記念企画として公式YouTubeチャンネルにて過去のコント動画127本を一挙無料公開する太っ腹な試みも話題となりました(※期間限定公開)。この企画では初期から最近までの名作コントが網羅され、ファンはもちろん初見の人々にも東京03のコントの歴史と魅力を伝えるものとなりました。反響の大きさから「コントの宝庫」と称される東京03コント全集Blu-ray BOX(全154本収録)の発売も決定し、改めて東京03の作品群の価値が再認識されています。
テレビやメディアでの活躍も目覚ましいものがあります。近年では3人揃っての冠番組として、2021年にコント番組『東京03とスタア』(日本テレビ)が地上波でスタートし、彼らのコントをテレビフォーマットで披露する新たな試みが行われました。レギュラー放送としては珍しいコント専門の番組ということもあり話題を呼び、東京03が培ってきたライブコントをお茶の間でも楽しめる貴重な機会となりました。また、フジテレビ系列のコント特番『THE CONTE』では2009年王者の東京03とかまいたち(2017年王者)がMCを務め、若手からベテランまで珠玉のコントを紹介する場を盛り上げています。こうしたテレビでの露出により、「東京03=コント」というイメージがますます浸透し、新規ファンの獲得にも繋がっています。さらにメンバー個々の活動として、飯塚はドラマ『この恋あたためますか』(TBS)など俳優としての出演やバラエティ番組のゲスト出演、角田は映画や連続ドラマへの出演に加え情報番組のコメンテーター挑戦、豊本もテレビドラマで個性的な脇役を演じるなど、ピンでの活動も増えています。それぞれが別分野で知名度を上げることで、「実はこの俳優さん東京03の芸人だったの?」と驚く視聴者もいるようです。そうしたピン活動を通じても東京03の名が広まり、結果的にコントに興味を持ってライブに足を運ぶファンも出てきているようです。
東京03は時代の変化にも柔軟に対応してきました。2020年のコロナ禍では、公演中止を余儀なくされる中でリモートコントに挑戦し、自宅からのオンライン公演『隔たってるね。』を開催しています。飯塚が自宅で書き溜めたネタをもとにリモートで3人が演じるという新しい試みでしたが、「画面越しでも面白い」「斬新なのにちゃんと東京03」と高評価を得ました。こうした状況下でも創作意欲を失わず、新たな笑いの形を模索する姿勢にファンからは称賛の声が上がりました。YouTube上でも、第2の公式チャンネルを立ち上げてコントの短編動画や未公開映像を発信するなど、デジタルプラットフォームを活用したファンサービスにも積極的です。
そして2023年3月、東京03は自身初となる日本武道館公演を開催しました。お笑いトリオが武道館で単独ライブを行うのは異例中の異例ですが、この公演「東京03 FROLIC A HOLIC feat.Creepy Nuts『なんと括っていいか、まだ分からない』」では、ヒップホップユニットのCreepy Nutsとコラボレーションし、音楽とコントを融合させたエンターテインメントに挑戦しました。大舞台でも変わらない東京03の安定感と、新ジャンルとの化学反応が見事にマッチし、大成功を収めています。武道館という大規模会場を満員にしたことは、東京03の人気とコントの魅力がより広い層に浸透している証と言えるでしょう。
今後の展望: 東京03はこれからも日本のお笑い界において重要な役割を果たしていくことでしょう。本人たちは常々「ライブが原点」と語っており、今後も定期的な単独ライブで新作コントを届けることが期待されます。同時に、テレビや配信、イベントなど様々な場でコントの面白さを発信し続けていくはずです。近年は異業種とのコラボやメディアミックス企画にも意欲的であり、「コント×音楽」「コント×ドラマ」など新たな挑戦も増えています。ファンとしては、東京03ならではの笑いを守りつつも驚きを与えてくれるような新企画や、新作コント集の映像化などにも期待が高まります。また、彼らの存在そのものがお笑い第七世代やさらに若い世代への刺激になっているため、将来的には東京03流のコントを継承する後進の育成やプロデュース業などに乗り出す可能性もあるかもしれません。もっと先の未来を言えば、東京03が結成30周年、40周年を迎える頃には、日本のコント文化自体が今より一層発展し、その中心に東京03の名前が刻まれていることでしょう。
常に進化を続け、笑いに対して貪欲でありながらもブレない軸を持つ東京03。リアルな人間関係を切り取ったコントで観客の心を掴むその芸風は唯一無二であり、一般のお笑いファンにとっても魅力的な存在であり続けています。これから先も東京03はきっと我々に笑いと感動を届けてくれるはずです。その動向から目が離せません。これからも「東京03のコント」にぜひご注目ください。