街裏ぴんく特集:独特な漫談スタイルでR-1王者となった注目のピン芸人
街裏ぴんくは、大阪府堺市出身のピン芸人です。本名は島谷洋平(しまたに ようへい)で、1985年2月6日生まれ。高校時代の同級生と漫才コンビ「裏ブラウン」を結成してお笑い活動を始め、大学在学中の2004年に初舞台を踏みました。コンビは約3年で解散し、その後はピン芸人(ソロの芸人)として漫談家の道を歩み始めます。下積み時代が長く続きましたが、2024年に念願のR-1グランプリ優勝を果たし、一躍注目のお笑い芸人となりました。
街裏ぴんくのプロフィールと経歴
街裏ぴんくは大阪でキャリアをスタートさせました。学生時代に組んだコンビでは吉本興業のオーディションに挑戦し、演芸作家・かわら長介氏の塾「魁塾」で研鑽を積みます。しかしコンビ解消後、さらなる飛躍を求めて2012年に東京へ進出しました。一時は松竹芸能に所属するも吉本新喜劇入りを志して退社し、オーディション最終選考まで進むも落選するなど、所属事務所探しに難航した時期もあります。苦労の末に現在のトゥインクル・コーポレーションへ落ち着き、都内の小劇場を中心にフリーで活動しながら実力を磨いていきました。
長年、インディーズのお笑いライブで熱心に漫談を披露し続け、コアなファン層を獲得していきます。2010年代後半にはテレビやラジオの深夜番組にも少しずつ出演し、2019年のR-1ぐらんぷりでは準決勝まで進出しました。さらに芸歴11年以上のピン芸人を対象とした大会「Be-1グランプリ2022」で優勝し、その独創的な漫談が業界で評価され始めます。そして2024年、芸歴制限が撤廃された「R-1グランプリ2024」に初めて決勝進出し、見事に第22代王者の座を勝ち取りました。優勝の瞬間、街裏ぴんくは感極まって拳を突き上げ、「R-1に夢はあるんですよ!」と喜びを爆発させています。同年には自身初の全国ツアーも開催し、ピン芸人の頂点に立った今、新たな活躍の場を広げています。
芸風・ネタの特徴:ファンタジー漫談という独自の笑い
街裏ぴんく最大の魅力は、その独特な漫談スタイルにあります。一般的な実体験ではなく、あたかも自分の身に起こった出来事のように架空の奇妙なストーリーを語る「架空漫談」「ファンタジー漫談」を得意としています。本人いわく「地に足のついたファンタジー漫談」と称するように、一見日常的な話から始まりながら、次第に現実離れした展開へ観客を引き込んでいくのが特徴です。自己紹介以外はすべて嘘の設定で語り通し、そのリアリティのある語り口と緻密なストーリーテリングで観る者を驚かせ笑わせるスタイルは唯一無二と言われます。
この芸風に至るまでには試行錯誤もありました。ピン芸人転向当初はフリップ芸やキレ芸、実話ベースのぼやき漫談も披露していましたが、次第に「嘘のネタ」である漫談の面白さに開眼します。東京進出後に浅草の小劇場で場数を踏む中で、本当にやりたかった架空のホラ話芸「ウソ漫談」を研ぎ澄まし、自分の天職は漫談だと確信するに至りました。以降は「誰とも被らない笑いができているか常に自問自答する」と語るように、徹底してオリジナリティを追求したネタ作りを続けています。
演じる際のスタイルは基本的にスーツに蝶ネクタイ姿で、淡々と語る中にも奇想天外な内容とのギャップで笑いを生みます。R-1グランプリ2024の決勝では、先輩芸人のやついいちろう(エレキコミック)の提案で仕立てたピンク色のスーツを着用し大きな話題となりました。舞台上ではマイク一本で派手な動きは少ないものの、緩急つけた語りと表情で観客を物語の世界に引き込みます。「日常からだんだん脱線していき、気づいたらズレた世界にいるような感覚にゾクゾクする」と自身も語るその漫談は、観る者に不思議な中毒性を残す独創的な笑いです。
他の芸人との関係性:エピソードや影響
街裏ぴんくはそのユニークな芸風ゆえ、さまざまな芸人たちと興味深い関係性やエピソードを持っています。まず、芸名の由来にも現れているように、彼はかつて組んでいたコンビ名「裏ブラウン」に由来する「裏」と、自身の風貌とのギャップを狙って選んだ色「ピンク」を組み合わせて現在の名前にしています。ただ「裏ピンク」だけではいかがわしすぎるとの理由で「街」を付けて「街裏ぴんく」としたという裏話があり、このネーミングセンスにも独特のセンスが光ります。コンビ時代の相方・ヤングゆじろー(Young Yujiro)は現在ラッパーに転身しており、異色の経歴を持つ元相方としてときおり話題に上ります。
尊敬する芸人として街裏ぴんくが挙げているのが、往年の上方漫才コンビ中田ダイマル・ラケットです。古典的な笑いの巨匠に敬意を払いながら、自身は最先端の漫談を切り開いている点に彼の芸人としての芯が感じられます。また、お笑い第四世代の先輩であるケンドーコバヤシの過激なコント「人のプーさん」に強い衝撃を受け、「こんなにネタって自由でいいんだ!」と目から鱗が落ちた経験を語っています。この体験が彼の作風を尖らせる原動力の一つとなり、「尖り続けてやりたいことをやり続けよう」と20年突き進む原点になったといいます。
共演やコラボの面では、ライブシーンでの横のつながりも豊富です。近年では同じ事務所の芸人や仲間たちとの合同ライブやトークイベントにも積極的に出演し、後輩芸人から「街ピン(街裏ぴんくの愛称)は天才だ」と一目置かれる存在です。テレビ東京のバラエティ番組『ゴッドタン』でも「この芸人は天才だ!」と紹介された経歴があり、業界内での評価は以前から高かったことが伺えます。衣装面で助言をくれた先輩のやついいちろうとのエピソードなど、先輩後輩問わず人脈が広いのも彼の人柄ゆえでしょう。
お笑い界での評価・影響力
唯一無二の「虚構の漫談」で笑いを取る街裏ぴんくは、お笑い界でも異彩を放つ存在として評価されています。20年というキャリアをかけて磨き上げた芸はまさに円熟の域に達しており、「漫談が天職」と本人も語る通り、その完成度に賞賛の声が集まります。R-1グランプリ優勝に際しても、「ベテランが満を持して才能を開花させた」といった論評が多く、同大会史上でも印象的な勝者として語られました。とりわけ、一人語りの漫談でピン芸No.1を勝ち取ったことは快挙であり、「ずっと漫談を貫いてきた人が評価されて優勝する姿に胸を打たれた」という声もあります。
その影響力は、同世代や後進の芸人たちにも及んでいます。長年“尖り続ける”姿勢を貫いた街裏ぴんくの成功は、「お笑いはここまで自由でいいんだ」というメッセージを示したと見る向きもあります。実際、彼自身が先達から受け取った勇気を糧にしたように、今度は街裏ぴんくの斬新な漫談が若手芸人たちに刺激を与えていると言えるでしょう。「自分だけの笑いを突き詰めれば、いつか報われる」というストイックな信念を体現した存在として、お笑い界に新たな風を吹き込んでいます。
ファンや業界関係者からの評判
長年ライブに通い支えてきたファンからの街裏ぴんくへの評判は非常に熱いものがあります。2024年R-1優勝の瞬間には「芸歴20年。最近おもしろくなった人ではない。ずっとずっとおもしろい人だ」と、古くからのファンが歓喜した様子も伝えられました。実力は以前から折り紙付きで、年間数回ペースで開催される漫談独演会では毎回濃密な笑いを提供し、「観客をフィクションの世界に酔わせる天才」と熱狂的に支持されています。優勝直後にはSNS上でも「ついに報われて涙が出た」「街裏ぴんくの漫談は唯一無二」といった称賛のコメントが相次ぎ、その存在が広く知られるようになりました。
業界関係者からの評価も上々です。審査員を務めたバカリズムや陣内智則らトップ芸人たちも、その高度な話芸に一目置いており、決勝の舞台裏では「すごい世界観だ」と感嘆の声が上がっていたといいます。記事や評論でも、「ウケるもスベるも自己責任で挑み続ける姿勢が心地よい」「漫談という古典的スタイルに新風を吹き込んだ革命児」と高く評価されています。女性タレントの奥森皐月さん(19歳)は自身が大ファンであることを公言し、街裏ぴんくの優勝を「歴史上一番好きな大会になった」と語るほど感動したと綴っています。こうしたファン・業界双方からの熱い支持が、街裏ぴんくの芸人としての存在感をより一層際立たせています。
街裏ぴんくの今後の展望
R-1王者となった街裏ぴんくは、40歳にしてキャリアの新章を迎えました。優勝後はテレビやラジオへの出演依頼が殺到し、『ENGEIグランドスラム』や『ダウンタウンDX』など人気番組への出演も果たしています。さらに優勝者特番『街裏ぴんくの職業・漫談家 絶対おもろいって言わせたんねん!』が放送されるなど、その唯一無二の芸風が茶の間にも浸透しつつあります。今後も漫談独演会の全国展開や、新たなメディアへの挑戦が期待されており、お笑いファンからの注目度は増すばかりです。
本人は「むしろ尖り続けたい」と語っており、今後も妥協なく独創的な笑いを追求していく姿勢を崩しません。培ってきた想像力と話芸を武器に、これからも観客を驚かせるファンタジー漫談を届けてくれることでしょう。業界内では「第二の志村けんになるのでは」との声も囁かれるほどで、街裏ぴんくの動向は大いに注目されています。ピン芸人として長年積み上げた経験と信念を胸に、街裏ぴんくはこれからも笑いの新境地を切り開いていくに違いありません。彼の紡ぐ独特な物語から、今後も目が離せません。
参考サイト
〖街裏ぴんく〗気になる名前の由来は?ファンタジー漫談でR-1王者に
漫談が天職 トガり続ける街裏ぴんくのウケるもスベるも自己責任の心地良さ|日刊ゲンダイDIGITAL
漫談が天職 トガり続ける街裏ぴんくのウケるもスベるも自己責任の心地良さ(2ページ目)|日刊ゲンダイDIGITAL
街裏ぴんく (Machiura Pink)|トゥインクル・コーポレーション
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