蛙亭特集:独特な芸風と人気ネタで注目を集めるお笑いコンビ
蛙亭とは?
蛙亭(かえるてい)は吉本興業所属の男女お笑いコンビで、2012年に結成された。メンバーは中野周平(なかの しゅうへい)とイワクラ(本名:岩倉美里)の2人。NSC大阪校の同期生として出会った2人は、当時お互いに相方が見つからず「相方探しの会」で意気投合しコンビ結成に至りました。イワクラは元々ピン芸人として活動しており、女性同士のコンビは衝突が起きやすいと考えて避けていたため、中野の温厚な人柄に大いに助けられているといいます。男女コンビ自体珍しかった時期から活動しており、お互い初めて組んだコンビとして長年培った抜群のコンビネーションを見せています。
コンビ名「蛙亭」はイワクラが命名しました。当初は「青レンジャー」という案もありましたが、憧れていた漢字2文字のコンビ名にしたいという思いから、中野の好きな「カエル(蛙)」と、イワクラが宮崎時代にアルバイトしていた焼肉店「はいから亭」の「亭」を組み合わせて生まれた名前です。ユニークな名前は会話のきっかけにもなり、周囲に強い印象を残しています。
蛙亭の芸風と特徴
蛙亭の芸風は、観る人の心をざわつかせるような独特の世界観に満ちたコントが持ち味です。ネタは自己の体験や妄想を投影したような作風で、中野が演じるヘンな男の妄想劇などシュールな設定が多く、イワクラ自身「ムカついた感情とか悲しかったことからネタを作っている」と語るように、その発想源にはマイナスの感情が含まれることがしばしばあります。暗さや狂気と笑いを絶妙にブレンドした世界観がクセになると評判です。
主にコント(寸劇)を主体としていますが、時折漫才も披露します。漫才を行う際にはかつて緑系統のお揃い衣装(中野はスーツ、イワクラは吊りスカート)を着用していましたが、衣装の摩耗をきっかけに2022年末頃から白黒ツートンの新衣装に刷新しています。また蛙亭ではボケとツッコミの役割が固定的でない点も特徴です。通常は中野がツッコミ、イワクラがボケ担当ですが、コントでは中野がボケ役、イワクラがツッコミ役に回る柔軟な掛け合いを見せることが多々あります。中野は岡山弁混じり、イワクラは宮崎弁(西諸弁)混じりの関西弁や標準語でやり取りし、中野(男性)の声が高くイワクラ(女性)の声が低いというギャップも一つのアクセントになっています。
ネタ作りは現在、主にイワクラが担当しています。結成当初からしばらくは中野が台本を書いていましたが、劇場ライブのバトルでイワクラ作のネタが上位入賞して以来、ネタ作成およびライブでのネタ選択はイワクラ主導になりました。蛙亭のネタはイワクラが設定と大枠だけ決めて台本を作り込まず、本番でほぼ即興的に演じるスタイルをとっており、舞台上でアドリブで肉付けしていくため中野の柔軟な受け答えと演技力がコンビの“母船”とも称されています。こうした即興性もあって、毎回ライブで違った化学反応が起きるのも彼らのコントの魅力です。また蛙亭のコントには、イワクラ扮する悪女が最後に痛い目に遭うといったカタルシスを感じさせる展開がしばしば盛り込まれており、生々しい下ネタや癖の強い女性像を描いていながら観客に引かれず笑わせきる絶妙なバランス感覚も光ります。
代表的なネタ紹介
そんな蛙亭のネタの中から、お笑いファンの間で特に人気の高いものをいくつか紹介します。
蛙亭の人気の理由
他の芸人との違いとして、蛙亭はその唯一無二の作風でお笑いファンから熱い支持を集めています。イワクラの独特な感性が生み出す狂気あふれるネタと、中野の一度見たら忘れられない強烈なキャラクターを活かしたコントで勝負するスタイルは蛙亭ならでは。先の読めないストーリー展開にハマる人も続出しており、「独特な世界観の漫才や読めないストーリー性のコントにハマる人が多い」と注目を集めている存在です。男女コンビという珍しさだけでなく、長年のコンビ歴に裏打ちされた安定感と信頼関係が生む掛け合いの妙も、他に替えがたい魅力となっています。
また、攻めた笑いと愛されやすさの両立も蛙亭が支持されるポイントです。たとえば下ネタや癖の強い人物描写など際どい題材を扱っても嫌味にならず面白く見せられるセンスは業界内でも評価が高く、東京03の飯塚悟志は「生々しい下ネタや女性像を描いていながら引かずに面白く見ることができる男女コンビ」と蛙亭の実力を評しています。イワクラが生み出す尖った設定を中野が親しみやすいキャラクターで受け止めることで、シュールさと親近感が同居する絶妙なバランスを実現しているのです。さらに、ネタの着想自体が日常の不満や悲しみといった感情に根ざしているため「あるある」と共感できる部分もあり、笑いながらどこか頷いてしまうような不思議な魅力があります。こうした点が、お笑いファンにとって蛙亭を特別な存在たらしめている理由と言えるでしょう。
メディアでの活躍と今後の展望
蛙亭はテレビやラジオ、ネットなど様々なメディアで活躍の場を広げています。テレビでは日本テレビの人気バラエティ『有吉の壁』をはじめ、数多くの番組に出演して笑いを届けています。NHK Eテレの子供向け番組『ビットワールド』内のコーナーでは中野がウサギ、イワクラがクマのキャラクターの声を担当し、テレビ東京の『ポケモンとどこいく!?』でも中野がキャラクター声優を務めるなど、声の演技でも才能を発揮しています。地上波以外でも活動が盛んで、テレビ神奈川・BSよしもとの『ニューヨークと蛙亭のキット、くる!!』では先輩芸人ニューヨークとの冠番組を持ち、テレビ朝日の『イワクラと吉住の番組』ではイワクラがピンで深夜番組のMCに挑戦するなど、新境地を開拓しています。さらにイワクラは地元局のテレビ宮崎で、仲の良い若手芸人(オズワルド伊藤俊介、ママタルト大鶴肥満、森本サイダー)と宮崎の魅力を探訪するロケ番組にも出演し、中野もナレーションで参加するなど、郷土愛あふれる企画にも取り組んでいます。
ラジオ方面でも躍進しており、2021年6月にはニッポン放送『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティに抜擢されました。さらに同年10月からは『オールナイトニッポンPODCAST 蛙亭のトノサマラジオ』がスタートし、2024年3月まで毎週配信を継続。フリートークでも独特の掛け合いを披露してファンを楽しませました。YouTube活動も好調で、公式チャンネル「蛙亭のケロケロッケンロール」では毎週ネタ動画を更新中です。2024年時点で登録者数は16万人に達しており、投稿されたコント動画の中には再生数が100万回を超えるものもあります(前述の「マッチングアプリ」など)。またイワクラ個人のYouTube『宮崎よかとこチャンネル』も開設され、地元・宮崎の情報発信に努めつつ登録者数は10万人超とこちらも人気を集めています。
今後の蛙亭はさらなる飛躍が期待されています。コンビとしてまず目標に掲げているのは、M-1やキングオブコントといった賞レースでの優勝を果たして自信をつけること。そして「優勝できたらあとは好きなことをやりたい」と語っており、単独ライブの全国ツアーを行って、中野の地元・岡山県とイワクラの地元・宮崎県での凱旋公演もぜひ実現させたいとしています。イワクラはせっかく始めた自身のYouTubeチャンネルでもっと様々な発信をしていきたいと意気込み、いつか宮崎で仲の良い芸人たちとフェスのような大規模ライブを開催することが夢だとも明かしています。独創的な笑いで快進撃を続ける蛙亭は、これからもテレビや舞台、ネットを問わず活躍の場を広げ、お笑いファンを楽しませてくれることでしょう。