お笑いコンビ「エルフ」特集:ギャル漫才の魅力と人気の秘密
エルフとは?メンバーのプロフィールと結成の経緯
エルフは、2016年に結成された吉本興業所属の女性お笑いコンビです。メンバーはボケ担当の荒川と、ツッコミ担当のはる。荒川は1996年8月30日生まれ(本名:荒川葉月)で大阪府和泉市出身。金髪ギャル風の派手な外見が特徴で、ネタ作りも担当する才女です。一方、相方のはるは1996年6月16日生まれで山口県で生まれ大阪府枚方市で育ちました。同い年の二人は大阪NSC(吉本の芸人養成所)38期生で、在学中に出会っています。
コンビ結成のきっかけはNSCで開かれた「相方探しの会」でした。お笑い談義に花を咲かせる周囲をよそに、自分の身内ネタを話していた荒川に興味を持ったはるが声をかけ、コンビを組むことになったといいます。結成当初、荒川は「ダメならすぐ解散しよう」と軽い気持ちだったそうですが、結果的に二人は息ぴったりの名コンビへと成長しました。コンビ名「エルフ」の由来もユニークです。実は荒川の飼っていた犬の名前と、はるの地元・ひらかたパークにある木製コースターの名前が偶然どちらも「エルフ」だったことから命名されたとのこと。お互いの共通点を初めて知った瞬間で、「縁を感じた」というエピソードはファンの間でも有名です。
結成後、二人は主に大阪の劇場を拠点に活動を開始。2022年には活動拠点を大阪から東京へ移し、さらなる飛躍を目指しました。東京進出時、荒川は「上京後2年で結果が出せなかったら芸人を辞めよう」と覚悟を決めて臨んだそうです。その真剣さも実り、近年では日本テレビの女性芸人No.1決定戦「THE W」で2022年に初の決勝進出、2023年には見事準優勝を果たすなど大きな注目を集めています。
エルフのネタの特徴と魅力
エルフのネタの最大の特徴は、一言で表すと「ギャル漫才」でしょう。荒川がギャル(俗にいう“ガングロ金髪ギャル”)キャラになりきって繰り広げる漫才はインパクト抜群です。主に漫才を得意としつつ、時にコントも演じますが、ネタ作りはすべて荒川が担当しています。漫才では荒川が明るくボケ倒し、はるが的確なツッコミで畳みかける正統派の構成です。その中に荒川独特のギャル語やノリが盛り込まれ、伝統的なボケ・ツッコミの型に現代的なスパイスが効いているのが魅力です。
荒川はネタ中に「みんな〜、ハピネ〜ス!」と観客に呼びかけたり、「ギャルしか勝たん!」という決めゼリフをハッシュタグポーズ(両手の指で「#」を作る)と共に放ったりします。この「○○しか勝たん」という言い回しは若者言葉としても浸透していますが、荒川はそれを自らの代名詞として漫才に取り入れて笑いを誘っています。また、オチでは両手を広げて語尾を伸ばし「〜で〜す!」とキメるスタイルなど、随所にギャルらしい仕草を織り交ぜているのもユニークです。例えば、ネタ中に居酒屋のメニューをギャル語に即興で翻訳する一幕があったり、プリクラ機の中にいるギャルを再現したりと、荒川の発想力と演技力には驚かされます。
代表的なネタとしてよく語られるのは、荒川が酔っ払ったギャルとシラフのギャルの違いを演じ分けるというもの。片思い中のギャルが飲酒時と素面で態度がどう変わるかを誇張して見せたショートコントで、大爆笑をさらいました。このネタは2020年開催の吉本主催「リール王決定戦」で優勝を勝ち取った30秒動画にもなっており、審査員から高評価を受けています。荒川の即興力とキャラクターの濃さが光るエピソードであり、短い時間でも強烈な笑いを生み出せるコンビだということを証明しました。
エルフの漫才が他のお笑いコンビと一線を画すのは、そのギャル要素にあります。結成当初、荒川は自分のギャルキャラを舞台で出し切っておらず、女性コンビというだけで目立つもののネタ自体はスベりがちだったといいます。しかし試行錯誤の末、「ギャル漫才」に辿り着いてから一気に持ち味が開花しました。根っからのギャルである荒川が本性全開でボケることで、他にはない色を出すことに成功したのです。「女性漫才師が少なかったから女コンビってだけで目立った」という荒川の言葉通り、希少な存在であった上に、ギャル文化をお笑いに昇華したスタイルは唯一無二。観客は荒川の派手な見た目と言動にはらはらしつつ、はるの冷静なツッコミとのコントラストに爆笑してしまう――これがエルフのネタの醍醐味でしょう。
エルフが人気の理由
若者を中心に広がる支持層
エルフはどのような層に支持されているのでしょうか?まず挙げられるのは、SNS世代の若者たちです。荒川はショートムービーアプリ「TikTok」で一躍人気者となり、フォロワー数は数十万人規模に上ります。派手なギャルメイクに乗せて繰り出す「ギャルあるある」ネタはSNS映えする面白さがあり、中高生や20代の視聴者を中心にバズりまくりました。実際、劇場での出番が減った2020年頃からTikTokに自作動画を投稿し始めたところ徐々に評判を呼び、ネットでファン層を拡大していったといいます。例えば、荒川が投稿したショートネタ動画には何万もの「いいね」が付き、「このギャル面白すぎる!」といったコメントが殺到。テレビに出る前からSNSで存在感を示していたことが、エルフの人気を押し上げた大きな要因です。
また、SNS発の人気がテレビにつながった好例として、2021年元日放送の日本テレビ特番『ぐるナイおもしろ荘』への出演があります。無名の若手芸人を発掘するこの番組で、エルフはネタ披露後のトークコーナーでも爪痕を残しました。即興で「その場にいそうなギャル」を演じた荒川にスタジオは大爆笑。これをきっかけに「金髪ギャルの芸人が面白い!」とお茶の間でも話題になり、一躍注目度がアップしました。以降、地上波のバラエティ番組出演が増えたことで、中高年層にも名前が知られるようになり、支持の幅が広がっています。
さらに女性ファンからの支持も厚い点も見逃せません。荒川のギャルキャラは一見奇抜ですが、「見た目はチャラいのに努力家」「芯がしっかりしていてかっこいい」と女性視聴者から好意的に受け止められています。実際、荒川自身ギャル文化への愛と情熱を持ちつつ、「バズったその先」を見据えて地道に芸を磨いており、そのストイックさが共感を呼んでいる面もあります。はるの方も「しっかり者で面白いお姉さん」というキャラクターで、女性から親しまれる存在です。二人とも派手さだけでなく人柄の良さや努力家な一面が垣間見えることで、幅広い層から応援されています。
SNSで生まれたバズエピソード
エルフの人気を語る上で欠かせないのが、SNSで生まれた数々のバズったエピソードです。中でも荒川の「ギャルあるある」シリーズは鉄板で、TikTokやTwitterで何度も拡散されています。たとえば、先述の“酔っ払いギャル”ネタ動画はSNSでも大いにバズり、「友達に送りたい」「何回見ても笑える」と拡散されました。さらに荒川は自身のInstagramやTikTokで日常の中のギャルネタを投稿することもあり、「プリクラ機から出てこないギャル」や「オール明けの朝マックにいるギャル」など共感度満点の短い寸劇が人気です。こうした動画発の笑いがテレビ番組でも取り上げられ、「ネットで話題のギャル芸人」として紹介されることも増えました。
SNSのみならず、エルフはファンとの交流にも積極的です。Twitterではライブ出演前後の様子やオフショットをツイートし、荒川の投稿に対してはるがツッコミを入れる微笑ましいやり取りも見られます。YouTubeチャンネル「エルフのギャルJAPAN」でもコンビの日常や企画ネタを配信し、ファンを楽しませています。コメント欄には「テレビで見てファンになりました」「ギャルJAPANいつも元気もらってます」といった声が寄せられ、着実に支持を広げています。
影響を受けた芸人やスタイル
エルフの二人がお笑いの道を志した背景には、憧れや影響を受けた芸人たちの存在があります。はるは小学生の頃、漫才コンビNON STYLEがM-1グランプリで優勝した舞台をテレビで見て衝撃を受け、「自分も漫才をやりたい!」と芸人を志したそうです。一方、スポーツ好きでもあったはるは教師の道と迷いましたが、担任に背中を押されNSCに進学した経緯があります。このように、王道の漫才師であるNON STYLEの影響で笑いの世界に飛び込んだはるは、ツッコミとしてしっかりした技術を身につけていきました。
荒川の方はというと、もともと子どもの頃からギャルに憧れていた異色の経歴ですが、お笑いのセンスは独学で磨いてきました。そんな荒川に転機を与えたのが、先輩芸人である蛙亭(かえるてい)イワクラからの助言だったといいます。荒川は派手な見た目ゆえに周囲から否定的に見られがちだった時期もあったそうですが、イワクラだけは「エルフは絶対劇場上がれるから大丈夫」「荒川はそのままのほうがおもしろいよ」と励まし続けてくれたのだとか。この言葉に背中を押され、「自分は自分でいいんだ」とギャルキャラを解放する勇気が湧いたと荒川は語っています。先輩芸人からの支えやアドバイスを素直に吸収し、自分たちのスタイルを築き上げてきた点にも、エルフの人柄と向上心が表れています。
スタイル面では、大阪の正統派漫才の空気感とギャル文化の融合がエルフならではの色と言えます。ボケとツッコミの息の合った掛け合いは、王道の漫才コンビに引けを取らないキレの良さです。その上で、荒川のギャル語や独特のワードセンスがスパイスとなり、新しい笑いを生み出しています。「ギャル漫才」というジャンルを確立したエルフは、先輩芸人からの影響と自分たちの個性をうまくミックスして、新時代のお笑いスタイルを切り開いていると言えるでしょう。
メディア出演歴・現在の活動状況
テレビ・ラジオでの活躍
エルフは劇場のみならず、テレビやラジオでも活躍の場を広げています。関西ローカルから全国ネットまで、バラエティ番組への出演も増加中です。例えば関西テレビのクイズ番組『ロザンのクイズの神様』や、TBSの深夜バラエティ『ジロジロ有吉』などに不定期出演しており、若手芸人枠で爪痕を残しています。読売テレビの情報番組『あさパラS』に出演したこともあり、地元関西での知名度も着実に上昇しました。中でも荒川は2023年4月から、朝日放送テレビ(ABC)の長寿番組『おはよう朝日です』で金曜レギュラーのサブコメンテーターに抜擢されています。朝の情報番組で明るいギャルキャラを炸裂させる荒川の姿は新鮮で、「朝から元気が出る」と好評です。
全国ネットでは、日本テレビ系『女芸人No.1決定戦 THE W』のファイナリスト出演(前述)以外にも、フジテレビ系『ネタパレ』や日本テレビ系『有吉の壁』などお笑いネタ番組への出演経験があります(※2023年前後)。さらにトーク系の番組にも呼ばれるようになり、2024年には人気番組『しゃべくり007』に荒川がゲスト出演。そこで荒川の本名が明かされると共に、ギャルではない素顔(すっぴん)を披露してスタジオを驚かせました。このようにバラエティからトーク番組まで出演の幅を広げ、テレビで見かける機会が増えているのが現在のエルフです。
ラジオにも進出しており、2020年にはラジオ関西の番組内企画「よしもと☆のびしろアワー」でアシスタントを務めたことがあります。さらに2024年11月からは、ネットラジオアプリAuDeeで初の冠番組『エルフのとりま集合ラジオ!』がスタートしました。ラジオではテレビとは一味違う素のトークが楽しめるとあって、ファンから好評を博しています。深夜ラジオさながらにリスナーの相談に乗ったり、ギャル語講座を開いたりと、音声メディアでも持ち前の明るさを存分に発揮しています。
YouTubeやSNSでの活動
前述の通り、エルフはSNSを巧みに活用して人気者になったコンビです。公式YouTubeチャンネル「エルフのギャルJAPAN」では、漫才やコント動画に加え、二人の日常に密着したVlog的な映像も公開しています。チャンネル登録者数は16万人以上、総再生回数は1億回を突破しており、その数字からもネット上での支持の高さがうかがえます。特に劇場で披露した漫才ネタをフルでアップした動画や、荒川がギャルメイクのコツを教える企画、はるが流行りのダンスに挑戦する動画など、多彩なコンテンツでファンを楽しませています。
中でも注目はTikTokでの発信です。荒川個人のTikTokアカウントはフォロワー数が38万人近くに達しており、「#ギャルあるある」「#ギャルしか勝たん」といったハッシュタグ付きの動画が次々とバズっています。短い尺の中で表情豊かにギャルの生態を演じる荒川の動画は中毒性があり、「何度も見てしまう」とリピーターになるファンも続出しました。SNS上での支持がテレビ出演につながり、またテレビで気になった視聴者がSNSをフォローするという好循環が生まれています。Twitter(現X)やInstagramでも荒川・はる各々がアカウントを持ち、ネタ動画の告知からプライベートの写真まで発信。特に荒川は「インスタのストーリーもギャル全開で面白い!」と評判で、芸人としてだけでなくインフルエンサー的な人気も獲得しています。
2020年には吉本興業主催の30秒動画コンテスト「#よしもとリール王決定戦」で荒川が初代王者に輝いており、これはまさにSNS時代における新たなスター誕生の瞬間でした。こうした実績から吉本内でも「SNSに強い芸人」として一目置かれる存在となり、公式企画への起用も増えています。例えば、2023年には荒川がプロデュースするコスメブランドの発表がオンラインイベントで行われたり、企業とのタイアップ動画に出演したりと、活動の場はさらに広がっています。エルフはお笑いライブだけでなくデジタル空間でもファンを魅了する、新時代の芸人と言えるでしょう。
舞台やライブでの様子
テレビやSNSで注目を集める一方、エルフの原点である劇場ライブでの活動も精力的に続けられています。大阪・なんばの「よしもと漫才劇場」を皮切りに、東京の「神保町よしもと漫才劇場」など吉本の劇場公演に定期的に出演し、新ネタを磨き続けています。特に大阪時代から継続して行っているのが、エルフ単独ライブシリーズ「ギャルJAPAN」です。2020年1月に初開催された第1回公演を皮切りに、その後もVol.2、Vol.3…と定期的に開催され、2024年2月にはなんと「ギャルJAPAN Vol.28」にまで達しました。大阪時代はもちろん、東京進出後も地元大阪に戻って開催することもあり、各地のファンに直接笑いを届けています。
単独ライブではテレビでは見せないコアなネタや新境地のコントにも挑戦しており、荒川・はるの創作意欲が感じられます。毎回公演チケットは即完売する人気ぶりで、客席にはギャル風ファッションに身を包んだ若者から、お笑い通の中高年まで多様なファンが詰めかけます。ライブ終演後には物販コーナーで荒川考案のグッズ(ギャル語ステッカーや荒川の名言日めくりカレンダーなど)も飛ぶように売れ、ファンとの交流タイムでは気さくに写真撮影やサインにも応じてくれるそうです。「生の漫才だとテレビ以上に迫力がある!」「掛け合いのテンポが最高」とライブ観覧組の満足度も高く、舞台上でも揺るがない実力をアピールしています。
また、賞レースにも引き続き挑戦を続けています。漫才の最高峰ともいわれる「M-1グランプリ」には結成翌年から毎年エントリーし、2021年と2023年には準々決勝まで進出しました。惜しくもM-1での決勝進出はまだ叶っていませんが、着実に成績を伸ばしており、その実力はプロの審査員からも評価されています。こうした舞台での地道な努力と経験の積み重ねが、エルフの笑いにさらなる深みを与えているのです。
今後の展望と期待
破竹の勢いで活躍の場を広げるエルフですが、彼女たちは今後どのような展開を目指しているのでしょうか。まず期待されるのは、さらなる賞レースでの快進撃です。直近では「THE W 2023」で準優勝とあと一歩のところまで来ただけに、念願の優勝を果たす日も近いかもしれません。本人たちもリベンジに燃えているはずで、「次こそは天下を獲る!」という意気込みでネタ磨きに励んでいることでしょう。また、M-1グランプリへの意欲も旺盛で、女性コンビとして史上初の決勝進出を成し遂げる可能性も十分にあります。もし実現すれば快挙であり、お笑い界に新たな歴史を刻むことになるでしょう。
メディア展開にもさらなる期待がかかります。現在はバラエティ番組での活躍が中心ですが、今後は冠番組を持つ可能性も考えられます。たとえば「エルフのギャルTV(仮)」のように、ギャル文化と笑いを融合させた独自色の強い番組が企画されれば面白そうです。荒川とはるの掛け合いならトーク番組やラジオでも十分にやっていけるため、将来的にはテレビ・ラジオ双方でレギュラー番組を持つことも夢ではありません。実際、荒川は一部メディアのインタビューで「一発バズって終わりではなく、その先も見据えて頑張りたい」と語っており、一過性のブームにとどまらず長く愛される芸人になることを見据えているようです。
さらに、エルフの今後の挑戦として考えられるのは多方面への進出です。既に荒川は2023年に自身初の著書となる日めくりカレンダー『まいにち、GAL! 31のギャル語録』を出版しており、お笑い以外の分野でも才能を発揮しています。今後はエッセイ本やギャル文化解説本の出版、ファッション誌への登場なども期待できるでしょう。また、CM出演や女優業への挑戦もあり得ます。ギャルキャラを活かした明るいイメージで企業CMに起用されたり、ドラマで個性的な役柄を演じたりすれば、新たなファン層を獲得するチャンスです。
とはいえ、根底にあるのは「笑いに対する真摯な姿勢」です。東京進出時に決意を固めて臨んだ荒川のエピソードからも分かるように、二人は常に高い目標を掲げ努力を続けています。ギャルというキャッチーな見た目に甘んじず、漫才師としての実力で勝負しようという意気込みが感じられます。今後もそのスタンスを崩さずに歩んでいけば、さらなる飛躍は間違いないでしょう。
お笑い第7世代以降、女性芸人の活躍がますます目覚ましい中で、エルフは独自の存在感を放っています。観客をハピネ〜スな気分にさせる彼女たちのギャル漫才は、令和の新定番として定着しつつあります。今後もエルフならではの笑いでお茶の間を盛り上げ、SNSでバズり続け、劇場で大爆笑を巻き起こしてくれることでしょう。その勢いから目が離せないエルフに、ファンもお笑い業界も大きな期待を寄せています。これからの活躍に「ギャルしか勝たん!」の精神でエールを送りたいですね。