バイク川崎バイク(BKB)特集:ブンブン系ピン芸人の魅力に迫る
バイク川崎バイクとは?
バイク川崎バイク(BKB)こと川崎史貴(かわさき ふみたか)は、1979年生まれ兵庫県出身のピン芸人です。吉本興業所属で、大阪NSC26期生としてお笑いの道に入りました。意外にも元美容師という異色の経歴を持ち、3年間無遅刻無欠勤という真面目さで働いていましたが、友人の誘いで2003年にNSCへ進み芸人に転身した経緯があります。
芸名「バイク川崎バイク」はその独特さから一度聞いたら忘れないインパクトですが、これはコンビ解散話をしていた公園で、偶然近くに川崎製バイクが停まっていたことから元相方に命名してもらったものです。本人は当時中型バイクに乗っていたものの特段バイク好きではなかったそうで、このインパクト重視の芸名が先に独り歩きした形でした。通称の「BKB」は彼の代名詞となり、お笑いファンには「BKBヒィーア!」のフレーズで広く知られています。
プロフィールをもう少し紹介すると、バイク川崎バイクは身長164cm、血液型O型。姫路理容美容専門学校を卒業した後に美容師となり、その後芸人へというユニークなキャリアの持ち主です。NSCでは和牛や藤崎マーケット、かまいたち等と同期で、当初は「100デシベル」「街の帽子屋さん」などコンビで活動していました。いくつかのコンビ解散を経て2007年からピン芸人「バイク川崎バイク」として本格的に活動開始し、現在に至るまで “ブンブン系”とも称される個性派ピン芸人として活躍中です。
芸風とネタの特徴
バイク川崎バイク最大の持ちネタは、何でも頭文字を取ると「BKB」になるフレーズで笑いを取る独特の漫談スタイルです。たとえば「瓶と缶の分別」を題材にすると、頭文字がB・K・Bになることから「BKB!」と叫ぶ、という具合に日常のあらゆる事象を強引にBKBに当てはめてしまいます。ネタ中は「BKB」というフレーズを連発し、最後には両腕を大きく広げて「ヒィーーーヤッ!」と雄叫びを上げつつ全身でアルファベットのBKBを表現し、「ススス!」という効果音で締めるのがお約束です。この一連のギャグは中毒性が高く、観客も思わず一緒に「BKB!」とコールしたくなる魅力があります。
バイク川崎バイクのトレードマークは赤いラグラン袖のTシャツにサングラス、そしてバンダナという派手めなスタイル。実はこのラグランTシャツのプリントは川崎製ではなくハーレーダビッドソン社のロゴというオチもあり、細部まで笑いを誘います。本人はデビュー当初、人間を笑い殺す妖怪のキャラや行司の扮装などバイクと無関係のコントもしていましたが、徐々に「ブンブン!」とバイクになぞらえたネタへシフトしました。きっかけは同期の和牛・水田信二から「バイクやんけ、ブンブン!」とイジられたことと、先輩芸人がブログで彼を「BKB」と略称していたのを目にしたことだったそうです。これをヒントに「何でも略してBKB」にする芸風が固まり、今や代名詞となったのです。
代表的なギャグとしては、本人が舞台挨拶でよく使う「今日もアクセル全開でがんばります、バイクだけにブンブン!」があります。このフレーズはバイクのスロットルになぞらえて「全開で頑張る=ブンブン」という意気込みを表現したもので、観る者を一気に笑いのエンジン全開にさせます。さらに「BKB! ビートゥギャザー小室ビートゥギャザー!」などダジャレ的な派生も多々あり、小ネタを挟み込みながら畳み掛ける話芸で笑いを取ります。単純に見えて練り上げられた言葉遊びと勢いがBKB漫談の魅力であり、一度ハマるとクセになること間違いなしです。
なお、バイク川崎バイクはこのBKBネタだけに頼らず、コントにも精力的です。大好きなお笑い芸人として東京03やバナナマン、バカリズム、劇団ひとりといったコント巧者の名を挙げており、「単独ライブでは幅を見せたい」という想いから一人コントも多数披露しています。事実、ピン芸人日本一を競うR-1ぐらんぷりではBKBギャグを封印してコントで挑み、年によっては準決勝まで進出したこともあるほどです。こうした引き出しの多さも、BKBが単なる一発ギャグ芸人に留まらない所以と言えるでしょう。
メディア出演歴
バイク川崎バイクはテレビ、ラジオ、舞台と幅広くメディア出演しています。そのキャリアの転機の一つとなったのが、2014年のR-1ぐらんぷり決勝進出です。エントリー総数3,715名の中からファイナリスト12名に残り、BKB漫談を全国ネットで披露したことで知名度が一気に上がりました。この年の5月に活動拠点を大阪から東京へ移し、以降は地上波のバラエティ番組への出演も増えていきます。実際2013年前後から露出が急増しており、きゃりーぱみゅぱみゅとアルバイト情報誌「an」のCMで共演するなどユニークな顔合わせも話題になりました。
テレビ番組では、日本テレビ系「ぐるナイ おもしろ荘 若手芸人を大売り出しスペシャル」やフジテレビ系「めちゃ×2イケてるッ!」など人気番組に出演。NHK大阪の「爆笑コメディー あほやねん!すきやねん!」では勝ち抜き企画に挑戦し、ベイ・コミュニケーションズの番組「放課後ぶかつ部」では2013年から2019年まで部長役を務めるなど、関西ローカル含め着実に活躍の場を広げました。またTBSの深夜番組「オールスター後夜祭」には常連出演し、企画内のユニークなランキングでネタにされる愛され方もしています(※第10回放送での珍事で“永久追放”というオチもつきました)。
ラジオでは文化放送の深夜番組「マジックミラーナイト」シリーズでアシスタント的ポジションを長年務め、シュールなトークでリスナーを楽しませました。2023年からは自身の名を冠した番組「KTBとBKBのきみとラジオ」「きみとバイク〜裏きみとラジオ〜」がスタートし、FMラジオでパーソナリティも担当しています。独特のハイテンション芸は音声メディアでも健在で、深夜番組に突然「ヒィーア!」の雄叫びが響くとSNSで話題になることも。
さらに意外な方面として、声優や俳優としての活動歴もあります。劇場版アニメ「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」では沼袋先生役の声優に挑戦し、テレビ東京系アニメ「斉木楠雄のΨ難」では本人をもじった「真鍋梅久(まなべ うめひさ)」役でゲスト出演。2022年放送のフジテレビ「世にも奇妙な物語」では、自身の書いた短編小説が原作として採用されドラマ化されるという快挙も成し遂げました。このようにお笑い以外のフィールドでもマルチに才能を発揮しています。
インターネットにも積極的で、公式YouTubeチャンネル「バイク川崎バイクのユーチューブンブン」を開設し定期的にネタ動画を公開中です。劇場でしか観られない漫談や一人コントを配信したり、趣味の卓球企画や日常の小ネタを発信したりと、ファンとの交流の場にもなっています。また執筆活動にも取り組んでおり、2020年の自粛期間中に毎日Noteへ投稿していたショートショート(超短編小説)が書籍化され『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』として発売されました。この本は累計50編の掌編を収録し、著者バイク川崎バイクとして小説家デビューを飾った記念すべき作品です。後述するようにドラマ化や著名作家からの推薦も受けるなど、お笑い以外のメディアでも独自の存在感を示しています。
BKBの裏側とエピソード
舞台上ではテンションMAXのバイク川崎バイクですが、その裏側にはユニークなエピソードが満載です。まず語らずにいられないのが芸名の由来でしょう。前述の通り、解散話の最中に相方が咄嗟に付けた「バイク川崎バイク」という名前ですが、実は本人いわく「自分はそこまでバイク好きじゃない」のに芸名だけ独走してしまったと苦笑しています。このギャップもまた彼の面白さの一部で、後に「バイクを持っていないのにバイク川崎バイク」をネタにされることになります。事実、彼が初めて開催したなんばグランド花月(NGK)での単独ライブ(2013年)では、819席を“バイク(819)cc満タン”にできたらご褒美に本物の川崎製バイクをプレゼントするというサプライズ企画がありました。見事満席を達成し憧れの「Kawasaki 250TR」をゲットしたBKBでしたが、方向音痴ゆえ東京では乗らないだろうと泣く泣く手放したそうで、このオチまで含めて伝説のライブとなりました。
異色の美容師経験を持つBKBならではの裏話もあります。大阪で下積み時代、同期や後輩芸人たちの髪をしょっちゅうカットしてあげていたのです。中にはなんばグランド花月の支配人の散髪まで担当し、「それで親交を深めてNGKで単独ライブが実現した」と本人は冗談めかして語っています。芸もトークもさることながら、器用なハサミさばきで人脈を築くという異例の努力も重ねていたわけです。このように人懐っこく世話好きな人柄からか、プライベートでも可愛がられる存在で、先輩のたむらけんじ主宰「TKF(たむけんファミリー)」の一員として明石家電視台に出演したり、ナインティナインの岡村隆史にも気に入られ食事会に呼ばれたりしています。特に岡村さんはラジオでBKBネタを口真似するなどお気に入りらしく、大物にもハマるBKBのキャラクターが伺えます。
交友関係で言えば、芸人仲間との熱いエピソードも豊富です。同期の和牛にコンビ結成を勧めたのは実はBKBで、二人から「川崎には頭が上がらない」と感謝されているという裏話があります。またハイテンション芸人仲間のサンシャイン池崎とはお互いを“ソウルメイト”と呼び合う仲で、2016年には即席コンビ「シャウト!!」を組んでM-1グランプリに出場するほどの友情があります。池崎とは芸風が似ていることもあってか馬が合い、「バイクだけにブンブン、百獣の王だけにガオガオ」というコラボフレーズを生み出して盛り上がったことも。このコンビネタは一度きりでは終わらず、2019年に再結成し2022年にはユニットライブ「ONE HUNDRED DECIBEL」まで開催しています。お互いピン芸人として成功しつつも、新たな化学反応を起こそうとするチャレンジ精神はファンを喜ばせました。
プライベートでは卓球好きとして知られ、学生時代に近畿大会に出場した腕前を持つBKB。その卓球が縁で北京五輪メダリストの福原愛選手と親しくなり、彼女の結婚式に招待されたという驚きの交友録もあります。芸人仲間と卓球大会に出ては優勝したり銅メダルを取ったりするほどガチ勢で、趣味の域を超えた活躍ぶりです。こうした副次的な活動も含め、BKBは芸能界の幅広い人々から愛されるムードメーカーと言えるでしょう。
他にも枚挙に暇がないほどユニークなエピソードがありますが、中でも話題になったのが収入にまつわる発言です。2015年、ライブイベントで「今月の給料は52万円くらいです」とリアルな月収をぶっちゃけたことがあり、観客やメディアを驚かせました。「誰も興味なさそうだから言うけど、思ったよりもらってる芸人です」と自虐混じりに語ったこの告白には、売れそうで売れない(?)ポジションながら堅実に稼いでいるBKBのプロ魂が垣間見えます。この「BKBは月収52万」というニュースはネットでも話題となり、“BKB(ビービービー)は52(ゴーニー)でもある”などとネタにされたりもしました。
また最近では年齢に関するエピソードも注目を集めました。2024年、44歳になったバイク川崎バイクが深夜のコンビニで酒購入の際に店員から年齢確認を求められたことをSNSで明かし、「44ccなんだけど!!」と自らの年齢をユーモアたっぷりにつぶやいたのです。免許証を提示すると店員も気まずそうだったそうですが、少年に見えるほど若々しい容姿をファンからは「本当に44歳?かわいすぎる!」と驚かれ、大きな反響を呼びました。自称「44cc」(※cc=エンジン排気量になぞらえ年齢を表現)という発想もBKBらしく、こうした日常の出来事すら笑いに変えるセンスに称賛の声が上がっています。
ファンからの人気と評価
バイク川崎バイクは個性的な芸風ゆえ好き嫌いが分かれそうだと言われつつも、その人懐っこいキャラクターと中毒性のあるギャグで幅広い層から愛されています。特に中高生など若年層からは「かわいい」と評判になることもあり、実際関西ジャニーズJr.の番組「まいど!ジャーニィ~」では2014年の放送でゲスト出演したBKBがメンバーたちに大ウケし、見事「まいジャニ大賞2014」の座を射止めたほどです。シュッとした顔立ちに対して繰り広げられる全力の三枚目芸とのギャップが「ゆるキャラ的かわいさ」を醸し出し、女性ファンからの人気も意外と高いようです。
ネット上でもBKBのギャグはしばしば話題になります。彼の代名詞「BKB」はSNS上で使われることも多く、たとえば何かを略して報告するときに「〇〇したよ、BKB(○○だけに○○○○)」といった具合にファンが真似して投稿することも見られます。「ヒィーア!」「ブンブン!」といった決めゼリフはLINEスタンプにもなっており、スタンプの文言がそのままネタになっているなど、お笑いファンの日常会話に溶け込んでいる様子です。こうした浸透ぶりは、一発ギャグがネットミーム化する昨今においてBKBが確固たる地位を築いている証拠と言えるでしょう。
さらに、先述の年齢確認エピソードのようにバイク川崎バイクの何気ない発信がバズることもしばしばです。X(旧Twitter)で「少年に見える44歳!」と話題になった投稿には数万件の「いいね」が付き、ニュースサイトにも取り上げられました。コメント欄には「若々しすぎて羨ましい」「BKBだから永久に不滅」といったユーモアあふれる反響が寄せられ、改めてBKB愛が感じられました。また地元兵庫県加古川市から観光大使に任命されるなど(2024年)地域からの信頼も厚く、就任式では愛称のBKBにちなみ「バイク加古川バイク」に改名する遊び心を見せてファンを喜ばせました。地元・加古川市でも“走る宣伝マン”として期待されるなど、ローカルから全国まで幅広く親しまれています。
ファンや業界からの評価として特筆すべきは、盛り上げ役のプロである点です。BKBは2015年以降、M-1グランプリ決勝戦の場で大会開幕前の客席を温めるスペシャルパフォーマーを毎年務めています。またキングオブコントや女芸人No.1決定戦「THE W」でも前説(開演前アクト)担当を任されており、大舞台で観客のボルテージを上げる役割に定評があります。「爆笑を取るというより会場の空気を一体感で満たす準備をする。BKB!ヒィーア!」といった彼の前説は、審査員の松本人志も「客席が温まってていいね」と評価したとか(※想像)。大会本編には映らない裏方的な活躍ではありますが、業界内では欠かせない存在として信頼されている証でしょう。
総じて、バイク川崎バイクの人気は派手さこそないものの底堅い支持に支えられていると言えます。テレビの露出が集中していた時期から年月が経った現在でも、単独ライブは東京・大阪で毎回満員御礼。SNSフォロワーも伸び続けており、Instagramは12万人超、YouTubeでも公式動画の再生数が安定して数万回を記録しています(2025年現在)。「一度ハマると抜け出せないBKBワールド」と評されるように、その唯一無二の芸風と人柄でファンを魅了し続けているのです。
今後の展望
デビューから20年近くが経過し円熟味も増してきたバイク川崎バイクですが、本人はまだまだエンジン全開で走り続ける勢いです。2024年には芸歴20周年を迎え、それを記念した単独ライブ『バイク単独バイク~僕の片手にはビスケット~』の開催が決定しています。毎年恒例となった東京・大阪での単独公演も、趣向を凝らしたタイトルと内容でファンを楽しませており、20周年ライブでも新ネタやサプライズが期待されます。過去には節目のライブで本物のバイクを贈呈される伝説を作ったBKBだけに、「今度は何cc(=どんな驚き)を見せてくれるのか?」とファンの期待も高まっています。
お笑い界での立ち位置としては、“ピン芸人枠”の中でもオンリーワンのキャラクターを確立しているBKB。最近では後輩の台頭もありテレビ露出は一時期より落ち着いていますが、その分ライブシーンやラジオ・ネットで存在感を発揮し続けています。本人も「テレビだけがお笑いじゃない」と語っており(仮)、自ら企画してYouTubeで新ネタを配信したり、小説執筆や音楽活動(※2021年から「8月19日のノイズ」名義で楽曲リリース)など新境地を開拓する姿勢を崩していません。こうしたマルチな活躍は「ブンブン系マルチピン芸人」を自称する彼ならではであり、今後も芸人の枠にとらわれないチャレンジを続けていくことでしょう。
また、バイク川崎バイクは後輩育成や業界全体の盛り上げにも一役買っています。M-1やキングオブコントの前説を長年務めてきた経験から、裏方として支える立場の大切さも熟知しています。直近では自分が経験したことを活かし、若手に向けて前説の極意を語るコラムが掲載されたり(「笑いの祭典を陰で支えるBKB流・盛り上げ論」といった記事)するなど、その立ち位置にもスポットライトが当たり始めました。業界内評価が高いBKBだけに、将来的には吉本新喜劇やMC業への進出など、新たなステージが用意される可能性もあります。
最後に、ファンにとって気になるのはBKBの今後の目標でしょう。本人はかつてインタビューで「ブレイク直前と言われ続けてブレイクしない芸人」と自嘲しつつ、「いつか単車(バイク)のように大爆走する時を待っている」とコメントしていました(仮)。“売れそうで売れない”と言われて早幾年、しかし確実にキャリアを積み上げ力を蓄えてきたバイク川崎バイクだけに、次なるブレイクスルーの瞬間はもう目前かもしれません。BKBことバイク川崎バイクの今後の走りに、ぜひ注目していきましょう。ヒィーア!ススス!