バカリズム特集:独特な芸風と多彩な活躍を徹底解説

2/28/2025
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日本のお笑い芸人バカリズム(本名:升野英知)は、その独特な芸風とマルチな才能で知られています。1975年生まれ福岡県田川市出身の彼は、ピン芸人としての活動のみならず、脚本家や俳優としても活躍し、お笑いファンから厚い支持を受けています。本特集では、バカリズムとは何者か、その芸風の特徴や経歴、脚本家・俳優としての顔、業界内外からの評価、そして今後の展望までを詳しく解説します。

Notion Image (File via Proxy)

バカリズムとは?

バカリズムは元々お笑いコンビの名前でした。1995年に升野英知さんと松下敏宏さんで結成したコンビ名が「バカリズム」で、既存にない造語にすることで検索時に混同されないよう工夫された名前です。コンビは約10年間活動しましたが、2005年末に相方の松下さんが引退して解散します。その際、升野さんは「名前を変えると芸歴がリセットされてしまう」と考え、「バカリズム」というユニットから相方が脱退したという形を取り、自身がピン芸人「バカリズム」として活動を続ける戦略を選びました。この判断が功を奏し、それまで積み上げた知名度を保ったまま新たなスタートを切っています。

バカリズムは高校卒業後、吉本興業の養成所(NSC)ではなく日本映画学校へ進学しました。周囲が俳優志望者ばかりの環境にあえて飛び込み「自分一人だけ芸人志望でいた方が、圧倒的に才能があるように見えるから」というユニークな理由だったといいます。このように異色の経歴を持ちながらも、彼は当初からネタ作りの才覚を発揮し続けました。コンビ解散後にピン芸人として本格的に活動を始めるや否や、その才能はすぐにお茶の間にも認知され始めます。

バカリズムの芸風

バカリズムの芸風は一言でいえば独特の世界観と緻密なユーモアです。主に一人コント(ピンのコント)を得意とし、大きな身振りや大声に頼らないシュールで知的な笑いを生み出します。時には映像ネタや小道具を用いたりもしますが、基本は日常に潜む「あるある」や理不尽さを鋭く切り取るスタイルです。その独創性から、フジテレビ系のネタ番組『爆笑レッドカーペット』では紹介キャッチコピーを「お笑い四次元ポケット」と銘打たれたほどで、まるで次元の違う引き出しから予想外の笑いを取り出す才能があると評されました。まさにドラえもんの四次元ポケットになぞらえられるように、バカリズムの発想は他の芸人とは一線を画しています。

バカリズムを語る上で欠かせないのがフリップ芸です。ホワイトボードや大きなフリップ(紙芝居のようなボード)をめくりながらネタを展開していくスタイルで、イラストや文字を書いたボードを使って笑いを取るこの手法は彼の代名詞的存在となりました。ピン芸人日本一を決める『R-1ぐらんぷり』に初出場した2006年大会でも、代表作となるフリップネタ「トツギーノ」を披露して注目を集めています。結婚式のスピーチのように「◯◯したらとつぎーの(嫁に行く)」とオチを付ける連作ネタで、一度聞くと癖になるリズムと意外性が大きな話題を呼びました。そのシュールな展開と独創性は観客を笑わせ、CM出演やグッズ化までされるヒットとなりました。

バカリズム本人は意外にもこのフリップ芸を「好きではない」と公言しています。というのも、「フリップネタは誰がやってもある程度笑いが取れてしまう」「形式として笑いを取りやすく、簡単にウケてしまうところがある」ためで、あえてその手法に頼りすぎないよう封印した時期もあったのです。実際、「トツギーノ」がブームになった後、バカリズムは「このままでは“トツギーノの人”になってしまう」と一発屋化を警戒し、約1年後にはこのネタの披露を一切やめています。当時は大胆な決断に見えましたが、升野さん自身「この戦略はバッチリ上手くいった」と述べており、結果的に様々な新ネタを生み出す余地を確保しました。フリップ芸という得意技に安住せず常に新しい笑いに挑戦し続ける姿勢こそ、バカリズムが他の芸人と異なる最大のポイントでしょう。

キャリアの軌跡

コンビ解散後、ピン芸人「バカリズム」としてスタートした升野さんは、驚異的な早さでお笑い界に頭角を現します。ピン転向からわずか3ヶ月後の2006年には、初出場の『R-1ぐらんぷり』で決勝進出を果たしました。この大会で4位入賞という好成績を収めると、その後も2007年・2009年・2010年と計4度ファイナリストに名を連ねています。中でも2009年大会では、フリップネタ「地理バカ先生」を披露し史上初となる審査員満点の100点満点を叩き出したことでも話題になりました。毎年ネタを刷新しながらR-1決勝の常連となったことで、「ピン芸人バカリズム」の実力が広く知れ渡ることになります。また、先述のように本人が人気絶頂だった「トツギーノ」を封印してまで新境地を開拓したことも功を奏し、一発屋に終わらない安定した活躍ぶりを見せました。

こうしたネタ番組や賞レースでの成功に加え、バカリズムはテレビのバラエティ番組でも存在感を発揮していきます。フジテレビ『爆笑レッドカーペット』や『爆笑レッドシアター』では斬新なコントで笑いを取り、伝統的なトーク番組『笑っていいとも!』にも出演してお茶の間に顔を浸透させました。ダウンタウン松本人志さんが主宰する『人志松本のすべらない話』では、テレビ局の警備員にまつわるエピソードを披露して見事MVS(ベストトーク賞)を獲得し、巧みな話芸にも定評があることを証明しています。また、アイドル番組『アイドリング!!!』ではMC(司会)を務めるなど、その活動の幅はネタ職人に留まらずバラエティ全般に広がっています。定期的に開催している単独ライブ公演も毎回即日完売となる人気ぶりで、生の舞台でもテレビでも常に高い評価を得てきました。

さらに特筆すべきは、大喜利形式のコンテストであるフジテレビ系『IPPONグランプリ』での活躍です。バカリズムはこの大会に初回から出場し、卓越した発想力と瞬発力で次々と笑いの「一本」をもぎ取っていきました。その結果、大会史上最多となる優勝6回を誇り、「IPPONグランプリの王者」あるいは「ミスターIPPON」と呼ばれる存在にまでなっています。歴代の出場者の中で優勝回数トップ(6回)、決勝進出回数も最多という記録を打ち立てており、バカリズムの大喜利センスが群を抜いていることが数字の上でも示されています。R-1ぐらんぷりで見せた緻密に作り込まれたネタとはまた別に、その場でお題に答える即興力でもトップクラスである点は、彼の芸人としての万能ぶりを物語るエピソードでしょう。

脚本家・俳優としての活動

お笑い芸人として第一線で活躍するバカリズムですが、その才能は舞台上の“演者”に留まりません。脚本家としても高い評価を受けており、2014年には連続ドラマ『素敵な選TAXI』でテレビドラマの脚本を初担当しました。元々ネタ作りに定評のあった彼は、この作品をきっかけに映像の脚本分野へ本格進出し、以降も映画『劇場版ひらがな男子~序~』や短編ドラマ『生田家の朝』など次々と脚本を手掛けていきます。

そして極めつけが2017年放送の連続ドラマ『架空OL日記』です。これはバカリズム自身が正体を隠して綴っていた架空のOL(銀行勤めの女性)の日常ブログを原作に、自ら原作・脚本・主演を務めた異色作でした。身近な職場風景を題材にしたコメディですが、その会話劇の巧みさや細やかな心理描写が評価され、ギャラクシー賞テレビ部門特別賞ならびにテレビドラマ脚本家に贈られる向田邦子賞を受賞しています。お笑い芸人が手掛けたドラマがこれほど高い評価を受けるのは異例で、バカリズムは脚本家としても不動の地位を確立しつつあると言えるでしょう。

俳優としてのバカリズムも見逃せません。本人いわく「役者志望ではない」と語っていますが、自ら脚本を担当した作品には積極的に出演し独特の存在感を放っています。『架空OL日記』では主要キャストの女性陣に紛れて本物のOLさながらに銀行員役を演じ、その違和感の無さに驚愕したという声も上がりました。コミカルな女装姿でありながら自然体の演技で物語に溶け込み、作品のシュールな雰囲気を高めることに成功しています。また、他の脚本家・監督の作品にも俳優として参加し、ドラマや映画で個性派俳優としての魅力を発揮しています。近年では映画『ウェディング・ハイ』(2022年公開)で脚本を担当し、自身は出演しない裏方に徹しながらも「笑いの鬼才」としてオリジナルストーリーを生み出しました。作家としての才能と演者としての表現力を併せ持つバカリズムは、お笑いの枠を超えてマルチに活躍する存在となっています。

バカリズムの影響と評価

独創的な芸風と多彩な活躍ぶりから、バカリズムは同業者や業界関係者からも高く評価されています。2010年にオリコンが集計した「面白いと思うピン芸人」アンケートでは堂々の第1位にランクインし、フリップを駆使した「トツギーノ」のような独創的ネタから『IPPONグランプリ』での大喜利まで幅広くこなすマルチな才能が認められました。この結果についてコメントを求められた際、バカリズム本人は「まさか僕のようなゴミクズ芸人が1位に選ばれるなんて…」と自虐的な冗談交じりに答えていますが、同業の芸人たちからも一目置かれる存在であることは間違いありません。また、ともに番組を制作したテレビディレクターからは「とにかく頭が良くて、笑いに対して貪欲。会話をすると論理的で、ノリだけでは喋らない。まるで制作スタッフと話しているようだ」とその印象を語られており、バカリズムのクリエイター気質と計算された笑いづくりに太鼓判が押されています。ダウンタウンの松本人志さんなど大御所からの信頼も厚く、『IPPONグランプリ』や『すべらない話』といった人気番組に欠かせない存在として起用され続けていること自体が、業界内評価の高さを物語っています。

一方、ファンからの支持が非常に根強いのもバカリズムの特徴です。彼のネタは派手さこそありませんが、日常の何気ない出来事や身近なテーマを面白おかしく描写するため「わかるわかる!」と共感を呼ぶものが多いのです。例えば前述のフリップネタ然り、些細な日常のズレや矛盾を鋭く突く笑いに「自分も同じことを感じていた」とうなずく視聴者は少なくありません。同時に、その発想自体は普通の人には思いつかない意外性に富んでいるため、「こんな切り口があったのか!」と驚かされる二重の楽しさがあります。クールで飄々とした立ち振る舞いの中に垣間見える情熱やサービス精神もファンに愛される理由でしょう。飾らない人柄と確かな実力で笑いを追求し続けるバカリズムは、多くのお笑いファンにとって唯一無二の存在となっています。

今後の展望

多才なバカリズムは、今後どのような領域に挑戦していくのでしょうか。本人は「ネタ作りをやめてしまうと僕は終わってしまう気がする」と語っており、芸人として新ネタを生み出し続けることに強いこだわりを持っています。その言葉通り、現在も毎年のように単独ライブで新作コントを発表し続けていますし、近年は若手芸人の登竜門である『R-1グランプリ』で審査員を務めるなど後進の育成にも関わっています(2022年大会で初めて審査員に就任)。ネタ番組や大喜利番組で培ったセンスを活かして、今度は“評価する立場”でもお笑い界に貢献し始めているのは、彼が業界から信頼される証と言えるでしょう。

脚本家・俳優としての実績を踏まえると、今後は映像分野で更なる挑戦をする可能性も高いです。すでに2020年代に入り映画の脚本執筆(『ウェディング・ハイ』)にも成功しており、将来的には映画監督としてメガホンを取る姿も見てみたいところです。また、2025年1月期には日本テレビ系ドラマ『ホットスポット』で脚本を担当することが発表されており、テレビドラマでも新作が控えています。こうした新たな作品づくりに意欲的な姿勢から、業界内では「バカリズムは将来的に国民的なタレントになるのではないか」といった声も上がっています。お笑いファンとしては、これから先もバカリズムならではの切り口で笑わせてくれる新ネタや、意表を突くドラマ作品との出会いに期待が高まるばかりです。唯一無二の発想力と行動力を武器に、バカリズムはこれからも日本のエンターテインメント界をリードしていってくれることでしょう。

参考サイト

  • マセキ芸能社 MASEKI GEINOSHA Official Site
  • 芸名の由来が意外すぎる芸人ランキング
  • バカリズム - Wikipedia
  • Bakarhythm - Wikipedia
  • テレ朝POST | バカリズム、フリップ芸を封印した理由
  • 脚本家として活躍する芸人5人。劇団ひとり、バカリズムも… | bizSPA!
  • 架空OL日記 | MOVIE WALKER PRESS
  • ウェディング・ハイ - Wikipedia
  • IPPONグランプリ - Wikipedia
  • マイナビニュース | バカリズムは「とにかく頭が良くて笑いに貪欲」
  • えんためブログ | バカリズムの本名と驚きの背景!
  • この記事を書いた人

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